研究紹介

「養育者-乳幼児間インタラクションにおける相互モニタリング過程の記録・分析手法の開発」について

Goffman(1964)は社会的状況(彼の定義では,『お互いにモニターが可能な環境,すなわちどこであれ,ある人がそこに「いる」すべての他者のナマの感覚に接近でき,他者たちもその人に接近できることがわかる環境』)にある人々を「集まり」と呼んでいます.集まりにおいて人々は,注意の焦点を共有する者として他の参加者を承認し,お互いにモニターし合いながら文化的なルールを参照し,どう振る舞うべきかを決めていると考えられます.こうした「集まり」の特徴について考察を深めていくうえで重要な領域の1つに乳幼児の社会化があります(Duranti et al. 2012).乳幼児は,養育者とのインタラクションにおいて相互にモニタリングを行う中で文化的なルールを参照するようになり,そのコンテクストにおける適切な行為を行うことを通じて特定の文化に社会化されていきます(Trevarthen 1977,1990,1999).

こうした関心のもと,本研究では乳幼児と養育者がお互いにモニターし合いながらインタラクションを行う過程をそれぞれの当事者の視点から正確に記録するための手法の開発を進めています.研究にあたっては,インタラクションの参与者とくに乳幼児にできるだけ負担をかけず,質の高いデータを得ることを目指しています.さらに,こうして得られたデータに基づいて,乳幼児と養育者のマルチモーダルなインタラクションが時間的,空間的にどのように組織化されているのかを解明するための分析手法について検討を行っています.これによって,乳幼児が次第に社会的な存在になっていく過程をつまびらかにするとともに,文化が形をとり,継承され,創造される仕組みやその際の規則性を明らかにすること,さらにはコミュニケーション研究の新たなパラダイムを創出することをねらっています.

国立情報学研究所共同研究

「養育者-乳幼児間インタラクションにおける相互モニタリング過程の記録・分析手法の開発」

研究代表者: 高田 明 (京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・准教授)