山本始乃 大学院生 ナミビア派遣報告 (2023/09/25-2023/12/26)

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ナミビア派遣報告: ヒンバ社会における子どもの暮らしと学びの研究

京都大学大学院
アジア・アフリカ地域研究研究科
アフリカ地域研究専攻
山本始乃

派遣期間:2023年9月25日~2023年12月26日
派遣先:ナミビア共和国
キーワード:子ども、社会化、牧畜、日常実践、学び、ナミビア

1. 研究課題について

 本研究は、基盤研究S「アフリカ狩猟採集民・農牧民のコンタクトゾーンにおける子育ての生態学的未来構築」の一環で、日常生活を通して子どもがいかに社会に適応し、文化的な存在となるのかを明らかにすることを目的とした。そのため、ナミビア北部乾燥地域のヒンバ社会における子どもの暮らしの実態を明らかにするため、参与観察や聞き取り調査を行った。

2. 派遣の内容

 本調査は、上記の研究課題達成に向けて、子どもの暮らしに密着することで、子どもと子どもを取り巻く諸要素がどのように関わっているのかについて明らかにすることである。また、子どもの生活が世代間でどのように変化するのかを検討するために、現地に暮らす人々への聞き取り調査も実施した。
  派遣では、3つの村へ滞在し、学校、家庭、家畜キャンプにおける子どもの様子を記録した。また、首都ウィントフックでは、調査許可更新のための関連機関訪問や図書館・資料館での情報収集を行った。

3. 派遣中の印象に残った経験や体験

 特に印象的な経験は、ウシの屠畜・解体作業の観察である。報告者は、これまで牧畜を生業活動にする人びとを対象に研究を行ってきた。牛肉になるまでの過程は、日本ではほとんど見ることができない。日本酪農家の研究時から、ウシの屠畜・解体作業は見たいと感じていたため、本派遣におけるウシの屠畜・解体作業の観察は、報告者にとって素晴らしい体験となった。
 報告者は、これまでに鶏やヤギ等の家畜の屠畜・解体作業は見たことがあったが、ウシの屠畜・解体作業は見たことがなかった。ウシの屠畜・解体は作業内容や時間において他動物と異なり大変なものであった。結婚式における屠畜・解体作業は男性の仕事であり、主に20~40代の男性陣が作業にあたる。しかし、身体が大きなウシ相手には、十数人の男性の協力が必要であり、作業も数時間に及んで行われた。さらに、若年層へ年配者が解体作業の指導に入るなど、日常生活では見られない指導や学びの瞬間も見ることができた。

写真1: 亡くなった子ヤギの解体作業
写真2: 捕獲後、屠畜・解体作業が始まる

4. 子どもと子どもを取り巻く諸要素の観察

 派遣の主目的である、子どもと子どもを取り巻く諸要素がどのように関わっているのかを明らかにするために、前回調査に続いて、家庭において、主に女の子の暮らしや活動に密着して調査を行った。また、本滞在では、学校での子どもと教師の関係や子どもの様子についても観察をした。
 参与観察では生活を支える子どもの様子だけでなく、現地語の理解度が深化したことで、親が子どもの行動にどのように起因するのかについても観察できた。さらに、教育機関での調査を通して、家庭外での子どもの様子や、子どもと教師の関係についても観察することができた。また、滞在村ではインタビューも行い、各年代における生活の変化とライフヒストリ―の聞き取りを行った。
 さらに、首都ウィントフックでは、調査許可更新の手続きを行ったことで、2024年末までの調査許可を取得することができた。

写真3: 学校にて、サッカーの授業

5. 今後の派遣における課題と目標

 今回の村滞在では、男の子の暮らしの様子についても散発的に観察することはできた。しかし、男の子と女の子ではまだ圧倒的に前者のデータ量が少ないため、今後は男の子の暮らしにも密着し、データ収集を行うことが今後の課題である。

写真4: 放牧中の様子
写真5: 水汲みの帰路に見える夕焼け