カメルーン派遣報告
京都大学大学院
アジア・アフリカ地域研究研究科・准教授
安岡宏和
2025年3月7日から21月まで、カメルーンに出張しました。バカとよばれる狩猟採集民が住んでいるカメルーン東南部の森林地域では、2018年7月から2024年7月まで、私が研究代表者としてSATREPSコメカ・プロジェクトを実施してきました。このプロジェクトは、熱帯雨林に分布しているさまざまな非木材林産物(NTFPs)や野生動物のマネジメントのしくみを、住民たちと協働してつくりあげていくものでした。そして、生態学的未来構築という観点で、本科研基盤研究と問題意識を共有しており、コメカ・プロジェクトの成果は、本研究にひきつがれています。現在は、コメカ・プロジェクトのカメルーン側カウンターパートであったIRAD(国立農業開発研究所)がこの地域にもつフィールドステーション(グリベ/ズーラボット)を拠点として、本科研プロジェクトの研究を実施しています。
3月7日に日本を発ち、8日にパリの図書館・書店で資料収集をした後、3月9日にカメルーンに到着しました。翌日、首都ヤウンデを発って3月11日にグリベ村に到着しました。3月12日、IRADの研究者とともに、グリベステーションにて非木材林産物をどのように活用していくのかについて議論し、IRADと京都大学が作成したNTFPs加工の実演をして住民が加工技術を学ぶワークショップを実施しました。

つづいてズーラボット村に移動し、3月13日〜16日にはバカのキャンプを訪問して狩猟の観察とインタビューをおこない、さらに我々が開発中の野生動物マネジメントの方法について説明しました。マネジメントの中核にあるR/Bモニタリングのコンセプト(https://sites.google.com/kyoto-u.ac.jp/comeca/rb-monitoring)は、バカにとって容易に理解できることが確認できました。この野生動物マネジメントは、動物資源の減少など生態環境の変化と保護区の設置などの社会的環境の変化のなかで、バカたちの狩猟実践がどのように再編されていくのか、そのなかでバカの子どもたちは森や動物たちとどのような関係をつくっていくべきなのか、といった点にかかわるものです。したがって、このマネジメントを実装するプロセスを記述し、分析することは、本プロジェクトの問題意識にたいして大きな示唆を与えるものだといえます。

3月17日は、ズーラボットステーションの整備をおこないました。具体的には、居住スペースの整備と電気・通信関係のセッティングをおこないました。そして3月18日にヤウンデに向けて出発し、19日の便で帰国の途に就きました。
