ベルギー派遣報告
―国際会議”Transmission and learning”への参加―
京都大学大学院
アジア・アフリカ地域研究研究科・教授
高田 明
令和7年11月16日から11月22日にかけて,ベルギーのリエージュを訪問し,国際会議”Transmission and learning: How do children engage in ritualised daily practices and rituals?”に参加した.この国際会議は,子どもの限界を先験的に想定することなく,子どもと大人の間や子ども同士で知識や技能を伝達し,学び合う過程と経験について,とりわけ儀礼的な文脈に注目しながら考察することをねらった学際的なものである.高田はScientific Committeeの一員として,企画段階からこの国際会議に関わってきた.国際会議を主催したリエージュ大学は,子どもの人類学や人間-環境関係についての優れた研究を行ってきており,その点でも本プロジェクトにとって重要な位置づけにある.
高田は,”To play and to construct social life”というパネル・セッションで”Playful imitation of ritualistic activities among the children of !Xun in north-central Namibia”というタイトルの発表を行い,ポスト狩猟採集民における社会化との関連で宗教的な儀礼や農牧民の生活習慣が世代を越えてどのように再編されるかについての議論を行った(写真1).このパネル・セッションでは他に,政治的な抑圧が強かった時期のウルグアイにおける子ども時代と玩具に注目して民衆の政治的抵抗の知恵を論じた発表やメキシコの先住民における儀礼的な生活の再構築の試みに子どもがどのように参加しているかを論じた発表があり,報告者の関心が高い儀礼や遊びと社会化の関係について刺激的な議論が展開された.またこれらの発表は,報告者が直前に訪れていたラテン・アメリカ(同年11月前半にグアテマラを訪問した)の事例を扱ったものであり,その点でも興味・関心を引かれるものであった.

国際会議の前後には,主催者の中心人物であり,旧知の研究者仲間でもあるリエージュ大学のÉlodie Razy博士やフランス国立持続的環境研究所(IRD)のCharles Édouard de Suremain博士,Razy博士の大学院生で子どもと環境との関係性の発達について研究を進めているMarie Montenair氏らと最近の研究成果や研究関心についての意見交換を行った.これらは生態学的なアプローチから子どもの未来構築について論じる本プロジェクトの関心とも共鳴するもので,非常に有意義であった.またリエージュはローマ時代から続くとされる古都であり,さまざまな時代に建築・改築されたキリスト教の教会や石畳の多い街並みからヨーロッパの歴史を改めて考えさせられた点でも有意義な訪問であった(写真2).

以上,短い滞在ではあったが,積極的に研究成果の発表や研究上の交流を行い,充実した滞在となった.これを可能にしてくれた関係諸機関や人々に感謝したい.