高田 明 教授 ボツワナ,グアテマラ派遣報告(2025/10/20-2025/11/10)

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ボツワナ,グアテマラ派遣報告
現地ワークショップ&フィールド・エクスカーションとWAUパネルのオーガナイズ

京都大学大学院
アジア・アフリカ地域研究研究科・教授
高田 明

令和7年10月20日から11月10日にかけて,おもにボツワナのハンシー,ニューカデ村,およびグアテマラのアンティグアを訪問し,アフリカ狩猟採集民・農牧民のコンタクト・ゾーンにおける子育ての生態学的未来構築にかかわる現地ワークショップ(ハンシー)とフィールド・エクスカーション(ニューカデ),および世界人類学連合(WAU)でのパネル(アンティグア)を組織した.

 ハンシーでは,現地での準備を経て,ボツワナのコンタクト・ゾーンにおける社会再編,特に(ポスト)狩猟採集民の子どもの社会化と在来知識の再活性化に関する課題について,まずボツワナの(ポスト)狩猟採集民の居住地に近い地方都市Ghanziで10月29日にワークショップ”Study of future making among the Batswana in contact zones”を行い,プロジェクト関係者,現地住民,その他の関係者の方々と一緒に議論を行った.

 ワークショップの第一部では、まずボツワナ大学のAndy Chebanne名誉教授(写真1)と高田が上記の主旨についてのイントロダクションを行い,さらに5名のボツワナ大学の関係者と2名の京都大学の関係者が個別の発表を行った.ボツワナ大学と京都大学は,長年教育研究に関する協力を進めてきている.そうした長期にわたる協力関係を反映して,これらの発表では,ボツワナの遠隔地域やそこで暮らす人々の持続的な発展に研究者がどう貢献できるか,コンタクト・ゾーンにおける言語実践の特徴やその変化,少数派の言語の正書法を定めることに関する理想と現実,ボツワナにおける教育制度の特徴とそれに対するノンーフォーマル教育の潜在的な可能性,これまで見逃されてきた少数派の民族における詩的な言語実践や多様な民話の特徴を記述・分析していくための構想,新しいメディアを通じて民話の物語りを行うことにより在来知識を再活性化する試み,などについての活発な議論が行われた.

写真1 Andy Chebanneボツワナ大学名誉教授による開会の挨拶

ワークショップの第二部では,(ポスト)狩猟採集民でもある現地住民,ローカルNGOや地方政府のメンバー,ボツワナ大学と京都大学の研究者らが4つのグループに分かれ,「あなたの地域の子どもたちは,非公式な学習環境でどのように学んでいますか?」「あなたの地域の子どもたちは,公式な学習環境でどのように学んでいますか?」「非公式な学習と公式な学習をどのように結びつけることができますか?」「あなたの地域について、他の人に知ってほしいことは何ですか?」といった問いについての意見交換を促すグループ・ディスカッションが行われた.それぞれのグループで活発な議論を行った後は,各グループの代表が他のグループの前でそうした議論を要約し,さらなる意見交換を行った(写真2).

写真2 グループワーク後の意見交換

さらに翌日の10月30日には、京都大学のチーム(ワークショップ参加者である野口朋恵さん,石川航大さん,高田を含む)が長年調査を続けてきたフィールドサイトでもあるNew Xadeを上記のワークショップ参加者が訪問するフィールド・エクスカーションを行った.具体的には,同地でノン・フォーマル教育を推進するイヤ・グイシ,フォーマル教育を推進するキョエン・プライマリー・スクール,野口さんや高田がお世話になってきた住人の方々の居住プロットなどで,子どもの教育や社会化に関する活動や課題などについての視察と意見交換を行った(写真3).

写真3 ニューカデでの住人の方々との意見交換

今回のワークショップとフィールド・エクスカーションで得られた知見については,本プロジェクトやその関連のさらなる活動を通じて,一層の深化と発展を達成していくことを目指している.

その後,南アフリカ,米国を経由して,グアテマラのアンティグアへと長距離移動を行った.アンティグアでは,世界人類学連合(WAU)の年次集会に参加した.WAUは国境を越えた人類学を活性化させる包括的かつ協力的なフォーラムとして結成された組織である.今回は,筑波大学准教授であり,高田の元指導院生でもある田暁潔博士と高田が,”Reuniting Body, Mind, and Environment: An Anthropological Take on Children’s Total Health”というパネルをオーガナイズした.このパネルでは,田博士と高田に加え,本プロジェクトで研究員を務めた田中文菜博士(現,九州大学/JSPS特別研究員PD)や本プロジェクトで京都大学に長期招へいを行ったHaneul Jang博士(Toulouse School of Economics, リサーチ・フェロー)など,計7名が話題提供を行った.話題は,”Nurturing children’s sound physical and moral development in (post-)hunter-gatherer society: Preliminary research findings among the G|ui and G||ana in central Botswana” (高田博士), “Managing Risks: Ethnographic Insights into Self-Care in Maasai Children’s Daily Lives” (田博士),“Singing caregiving behavior among the central African hunter-gatherers” (田中博士),“Childcaregiving and Children’s Well-being Among the BaYaka Hunter-Gatherers and Yambe Fisher-Farmers in the Republic of the Congo” (Jang博士)などフィールド,トピックとも多岐に渡っており,対面およびオンラインでの参加者と子どもの包括的な健康についての活発な議論が行われた(写真4).

写真4 研究発表を行う田中文菜博士

今回のWAU会議は,開催地が中米の歴史ある街アンティグアであったこともあり,スペイン語圏の研究者との交流が深まったことやその研究の雰囲気や歴史に触れることができたことも収穫である.さらにアンティグアの中心部にあるThe National Museum of Art of Guatemala (MUNAG)では先史時代から植民地期に至る広範な歴史・文化資料や同地のアーティストによる現代美術の展示が行われており,そこから多くの知的な刺激を得ることが出来た(写真5).

写真5 The National Museum of Art of Guatemala (MUNAG)のモニュメント

以上,今回も積極的にアクション・リサーチと研究成果の発表を行い,充実した滞在となった.これを可能にしてくれた関係諸機関や人々に感謝したい.