グアテマラ派遣報告 ―世界人類学連合2025年大会への参加―
筑波大学
体育系・准教授
田暁潔
2025年11月3日から8日にかけて、世界人類学連合2025年大会(World Anthropological Union (WAU) 2025 Congress)に参加するため、グアテマラのアンティグアを訪問した。本大会では、健康や教育、言語、移民、人間と環境、技術と社会、感情、法と社会、フェミニズムなど人類学の領域で扱われてきた幅広い22のテーマが設けられ、それぞれのテーマの下でパネルが企画された。この大会で、京都大学の高田明教授とともに、「身体と心と環境の再統合:子どものトータルヘルスに対する人類学的考察(Reuniting Body, Mind, and Environment: An Anthropological Take on Children’s Total Health)」というパネルを企画した。このパネルは、大会の第13番目のテーマ「健康の人類学:医学文化、ウェルビーイングとケア(Anthropology of Health: Cultures of Medicine, Wellbeing, and Care)」に位置づけられており、このテーマにおいて唯一、子どものウェルビーイングに注目したものであった。

わたしたちのパネルは、子どものウェルビーイングを個人の生理学的健康状態だけでなく、社会や環境とのつながりから包括的に検討することを趣旨としていた。具体的には、三つの設問からウェルビーイングを再検討した。
(パネル情報:https://www.waucongress2025.org/panel/?id=328)
- 異なる地域社会において、子どもおよびその親は、健康や子どものウェルビーイングをどのように定義しているのか。
- 心理的発達における身体の役割、ならびに身体的発達における心の役割とは何か。小規模社会の人々は、身体と心の相関関係、そしてそれらが子どもの健康とウェルビーイングに果たす役割をどのように捉えているのか。さらに、子どもたちは日常生活のなかで、ローカルな健康・ウェルビーイング概念をどのように実践しているのか。
- 子どもの健康とウェルビーイングにとって、どのような人々、またどのような社会文化的要因が重要なのか。大人や他の社会的存在、さらには非人間的存在を含め、それらはどのように子どもの健康とウェルビーイングの形成過程に関与しているのか。
開催当時、自分を含む7名の研究者が研究報告を行った。研究発表では、コンゴ、カメルーン、ボツワナ、ケニア、グアテマラでのフィールド調査の事例が紹介され、異なる地域社会における子どもの健康の捉え方や、健康と関連する子育て方針、子どもの成長、身体運動、疫病と治療など、多側面から子どものウェルビーイングの多様性と複雑性を検討した。そして来場者とともに、衛生領域を中心としたウェルビーイングの既存概念の限定性について、批判的かつ刺激的な議論を展開し、盛況のうちに開催することができた。

本大会ではまた、スポーツ人類学領域のパネルから子どものウェルビーイングを考えるためのヒントを得た。とりわけ、高田教授とともに、スポーツ人類学者であるトーマス・カーター(Thomas F. Carter)氏と面会する機会を得た。カーター氏は、スポーツ人類学および「スポーツを通じた開発」研究の分野で国際的に知られる研究者である。面会では、本パネルの議論、とりわけ非西洋地域で展開されている体育教育や、スポーツを通じた開発実践といった特定の社会的環境における子どものウェルビーイングの捉え方について意見交換を行い、重要な示唆と助言を得ることができた。 以上、本大会への参加とパネルでの議論を通じて、子どものウェルビーイングを多角的に検討する貴重な機会を得た。今後は、これらの知見を基盤として、ケニアでのフィールド調査をさらに進め、子どものウェルビーイングの議論を深めていきたい。